野外活動よもやま日記

登山や身近なトレッキングの活動を記します

2025.06.06 太平山連峰縦走

はじめに

6月6日の予報は朝から快晴。最高気温が25度を超えそうな初夏の陽気。これを受けてすっかり夏山モードとなっている(はずの?)太平山(秋田県秋田市上小阿仁村)に久方ぶりに登ってみることにしました。



1 太平山登山の概要と連峰縦走について

1-1 概要

まずは次の図1をご覧ください。

図1 太平山の登山道(北方稜線ルートを除く)

太平山登山道概要

この内、黒色の実線で描かれたルートが今回登る「太平山連峰縦走ルート」です。さらに今回は太平山スキー場・リフト上駅を登山口とする「二手ノ又コース」を選択しました*1

その他、図1中に描かれる登山道については次のとおりです。

  • 青色の実線:野田口ルート
  • 緑色の実戦:丸舞口ルート
  • オレンジ色の点線:旭又ルート(現在歩くことができません)
  • 灰色の点線:北方稜線ルート*2(複数のルートがありますが、いずれも情報が少なく歩けるかどうか不明です)

詳しくは、↓こちらを参照してください。と言いたいところですが…

theboon.net

この中で紹介されている次の2つのルート(ホームページ上では「コース」)は2023年7月の水害の影響で、2025年6月6日現在、登山口である「旭又」に辿りつけません。

  1. 旭又 - 太平山(奥岳)コース
  2. 旭又 - 宝蔵岳 - 太平山(奥岳)コース

上記2つのルート(コース)は、体力消耗度、危険度ともに小さく、かつ短時間で登ることができるため、初心者向きルートであるだけに残念です。上記2つに続く次の2つのルート(コース)は登攀可能です。

  1. 木曽石 - 太平山(奥岳)縦走コース
  2. 仁別 - 前岳・中岳コース

実は今回の太平山連峰縦走ルートは上記3と4を混ぜ合わせた、いわゆる「ハイブリッドルート」となります*3

さらに最後の2つですが、登山口が車で辿り着くことのできない「仁別・国民の森」であることに加え、登山道自体ほぼ廃道に近い状態になっているものと思われますので推奨できません。

  1. 軽井沢 - 太平山(奥岳)コース
  2. 軽井沢一の沢 - 中岳コース

1-2 太平山連峰縦走ルートについて

今回は複数ある太平山登山ルートの中で、「太平山連峰縦走ルート」を歩いてみることとしました。ルートの特徴は以下のとおりです。

ルート全般

  1. 太平山の前衛峰「前岳」から「中岳」そして山頂である「奥岳」へと続くルートです
  2. ルートが長く、アップダウンもそれなりにあります
  3. 2より当然のことながら歩く時間が他のルートに比べて長くなり、消耗度も大きくなります

ルート詳細

区間No 区間説明 摘要
区間 登山口から中岳まで
  • 途中、勾配のきつい部分も所々ありますが、滑落等の危険な箇所も少なく初級・中級者向きです
  • 道はよく整備されており明瞭です
  • 最初から最後まで林の中を歩く感じになります
  • 前岳から中岳までの間に「三角井戸」という水場がありますが、水量が乏しいこともあって、給水にはあまり適していません*4。したがって今回のルートを歩くに当たっては「水分持参」が原則になるものと思います
  • 「三角井戸」から「中岳」に至るまで急な登りになります。「三角井戸」からの「登り始め」がやや荒れていて滑りやすいので要注意です
  • 同様に「三角井戸」から「中岳」までの区間において、冬期ないし残雪期シーズン用とおぼしきピンクテープが夏道から外れたエリアに一部マーキングされているようです。迷い込まないよう注意が必要です
区間 中岳から野田分岐まで
  • 中岳から野田口ルートとの合流点である野田分岐までの3.4キロメートルの区間です
  • 激しいアップダウンはありませんが小さなアップダウンが連続します
  • 最初から最後まで樹林帯の中の道であり、推測ですが、おそらく行程の約9割方は「トラバース道」です
  • 正直言って「悪路」です。その理由としては以下に続くとおりです。なお、数年前に「この区間内限定で設定された道標」*5はすべて剥がれ落ちていました
  • (悪路理由1)向かって左側*6が切れ落ちている区間が多く見受けられ、少なからず滑落の危険がつきまといます
  • (悪路理由2)木の根や折れた枝が多く見受けられ、滑りやすく、さらに行く手を阻む倒木がいくつかあります
  • (悪路理由3)沢を徒渉する地点では、道がわかりずらく道迷いリスクがあります
  • (悪路理由4)そもそもトラバース道でもあり、さらにまた樹林の中であることもあいまって、風の通りがあまりよくなく、蒸し暑くなる傾向にあります
区間 野田分岐から山頂まで
  • 主稜線の尾根にそってアップダウンが続きます
  • 尾根は痩せており、一部切れ落ちています
  • 難所の鎖場「弟子還・でしがえり」があります
  • 背の高い樹林は見られなくなり辺りは低灌木となります
  • 眺望に優れています

1-3 二手ノ又登山口について

  • 自家用車の場合、登山口へのアプローチのために、まずは秋田駅方面から「クアドーム・ザブーン」を目指します
  • クアドーム・ザブーンにまもなく到着という坂道を登っていくと進行方向右側に森の中に入り込んでいく林道(基本的に砂利道)が出現します。その林道を入っていきます*7
  • 舗装路から林道に進入してすぐに「前岳へ」という看板がありますので、その看板が示す方向に従い左折します
  • 道なりに進みます。途中右折する箇所が一か所あります。太平山スキー場のリフトに沿って緩斜面を車で運転していきます
  • 進入口から登山口まで約2.5キロメートルです
  • リフトの上駅の広場が駐車場になります
  • その駐車場から数メートルさらに道なりに歩くと女人堂・前岳へと続く「登山道」に至ります。登山道との合流点にベンチがあります

2 今回の登山の概要

日程:2025年6月6日(金)

ルート:太平山連峰縦走(前岳→中岳→奥岳縦走ルート)

天候:晴れ

推定気温:登山口(下山時)26度

風の状況:次のとおり

  • 区間①:金山滝コースとの合流点近辺から女人堂まで微風。その他は無風
  • 区間②:基本的にトラバース道であることもあって無風
  • 区間③:推定2から3メートル程度の風あり
  • 山頂:推定5メートル程度の冷たい風あり(肌寒さ感あり)

実績値:次のとおり(GPSログによる)

  • 歩いた距離:16.3キロメートル
  • 累積標高(登り):1,294m|累積標高(下り)::1,286 m*8

3 行程

3-1 実績表(「行程」欄にある「アルファベット表記」は画像の番号を示します)

段階 区間 行程
登り 05:05【二手ノ又登山口(リフト上駅)】-05:55【金山滝コース分岐】-06:04【女人堂】-06:13/15【前岳】-06:36【三角井戸】-06:53【中岳
06:56【中岳】--07:44【雪渓】--08:20【野田分岐
08:22【野田分岐】-08:30/32【宝蔵岳】-08:40【弟子還・取付】--08:52【弟子還嶽神社(石碑)】-09:10【太平山(奥岳)山頂
下り 09:21【太平山(奥岳)山頂】--09:56【宝蔵岳】-10:02【野田分岐】
10:05【野田分岐】-10:37【雪渓】-11:27【中岳】
11:33【中岳】-11:44【三角井戸】-12:04【前岳】-12:10/12【女人堂】-12:46【登山口】

3-2 グーグルマップ(GPSログ入り)

3-3 国土地理院地図(GPSログ入り)

太平山連峰縦走(国土地理院地図)


4 画像

画像A(05:02) 二手ノ又登山口・駐車場

その正体は「太平山スキー場リフトの上の駅」です。冬期はここからスキーヤーが滑走します。登山道はこの駐車場に隣接するような形で通っています

二手ノ又登山口

画像B(06:04) 女人堂

眺望がよいです。歩いてちょうど1時間程度ということもあり、小休憩に適しています

太平山前岳手前の女人堂

画像C(06:13)前岳・山頂
朝日を浴びる林の中に佇む静かな山頂です

前岳山頂

画像D(06:36)三角井戸

前岳→中岳の間にある重要なポイント。水量乏しいこともあり(画像中央やや右下の岩間)、前述のとおりここでの給水はあまりお薦めできません。ここから中岳に向けて急な登りになります

三角井戸

画像E(06:55)中岳山頂の小屋

朝日を浴びる中岳の小屋。扉は開きます。中に人が入ることができ、休憩できます

太平山中岳山頂

画像F(06:55)中岳からの眺望

鳥海山が見えます

太平山中岳山頂

画像G(06:57)中岳山頂小屋の背後から山頂(奥岳)までの稜線をのぞむ

目的の太平山山頂(奥岳)が山並みの先に見えます

太平山中岳から奥岳の稜線

画像H(07:22)沢筋に枝散乱

沢筋に枝が散乱していることもあって、道がわかりにくいですが、画像中の矢印の方向に進みます。決して沢筋を下ってはいけません。この先、同じような箇所がもう一か所でてきますが、同じような感じで進んでいきます

中岳から野田分岐_1

画像I(07:32)行く手を塞ぐ倒木

倒木を乗り越えた地点から振り返って撮影。今回は倒木の上側(画像向かって左側)を乗り越えポイントとしました

中岳から野田分岐までの倒木

画像J(07:44)雪渓現る

最後の名残の雪渓です。まもなく消えるでしょう。今回の行程中、雪を見たのはここだけでした。この雪渓を画像H中の矢印と同じような感じで横切ります

中岳-野田分岐_3

画像K(08:11)はげ落ちた道標(6/7)

「中岳」-「野田分岐」間の道標「6/7」発見。悪路のゴールである「野田分岐」まで残り400メートル

中岳-野田分岐_4

画像L(08:21)野田分岐に到着

画像右側から野田ルートが合流します。ここから先、我々は画像左下側に進んでいきます。ここから道のコンデションが格段によくなります。ただし、ここで終わりではありません。最大の難所が待っています

野田分岐

画像M(08:31)宝蔵岳分岐(宝蔵岳山頂)

登山口のひとつである「旭又」につながるルートをここで分かちます。分岐するそのルートを除いてみたのですが、枝の散乱が激しく仮に元の登山道の状態に戻すにしても時間がかかりそうです

宝蔵岳分岐

画像N(08:44)弟子還・でしがえり(鎖場)

ルート上の最大にして最後の難所

太平山・弟子還

画像O(08:52)弟子還嶽神社(石碑)

神社といっても社殿があるわけではなく、石碑があるのみです。難所「弟子還」はこの神社でもって終了です。ここから先頂上に向けて最後の登りがあります。なおここから頂上にかけて想像以上に笹藪が濃くなっていましたが、道筋は明瞭でした

弟子還嶽神社

画像P(09:18)太平山(奥岳)山頂

背後に日本海男鹿半島

太平山山頂

画像Q(09:18)太平山(奥岳)山頂の神社・社殿

画像にあるとおり、板がはめ込まれたままで閉鎖状態でした。同様に「参篭所(山小屋)」と「トイレ」も閉鎖状態でした

太平山山頂神社_社殿


5 最後に

5-1 留意すべき点や感想など

今回の山行で合計2頭のカモシカと遭遇しました。1頭目は「登山口」に至る林道にて*9、もう一頭は「弟子還」を見上げたときに上にいました。運良く「クマ」に出会う事はありませんでした

  • 登山口から中岳までの区間について

2023年7月の水害以降、「旭又ルート」が不通となっている現在、標題の中岳までのルートが最も人気のあるルートとなっているものと思われます。今回も平日であるにもかかわらず、標題の区間には少なからず登山客がいました。ただし、中岳を目指す今回出会った登山客のほとんどは「二手ノ又登山口」ではなく、さらに標高が低く、結果的に長いルート取りとなる「金山滝登山口」から登ってきているようでした

  • 中岳から太平山山頂(奥岳)までに出会った登山客について

山頂直下にて私が下っているときに登ってくる登山客1名と出会ったきりです。おそらくその登山客は「野田口ルート」を登ってきたのだと思われます

  • 中岳から野田分岐まで(その1)

標題の区間が「今回の山行の肝」であると思います。今回はこの区間が未知数であったため、何らかのアクシデントまたはトラブルに遭遇したときのための時間的アドバンテージをあらかじめ確保しておきたかったことから、自宅を早出し午前5時早々には入山できるような態勢を整えました。なお悪路の中でもポイントとなるのは、「沢筋・雪渓の徒渉」と「倒木越え」であろうと思います。前者については3か所ほど*10、後者については巨大倒木が1か所ありました

  • 中岳から野田分岐まで(その2)

下りにて、虫にさされたようです。手の甲と首筋を少しばかりやられました。当日のこの区間は、ほぼ風がなく、湿度が他の区間に比べてやや高かったのではないかと思われます。さらに立ち止まると蠅が集まってくるような状況でした。*11

  • 時間制限の設定について(推奨)

今回の山行は距離が長く悪路もあり最後に鎖場である「難所・弟子還」も待ち構えていることから、行程中、任意の特定ポイントに制限時間を事前設定し、「○○時までに特定ポイントに到達できなかったときは引き返す」などの措置を講じることを推奨します。*12

  • 山頂について

山頂には神社の社殿、参篭所(山小屋)がありますが、いずれも出入口が板張りされており、閉所となっていました。なお、山頂より少しばかり下ったところにトイレがありますが、出入口のドアノブが開かないように紐で結わいてあり、実質使用不可でした。下界は25度程度はあったかもしれませんが山頂は冷たい風が吹き、個人差はあれど私的には体感は10度未満でした。長時間佇む場合は、レインウエアまたはウインドブレーカー等の風を遮蔽できるウエアを着用したいところです。なお例年山開きは6月第2週の日曜日となっているようですが、次のページを参照する限り今年は未定であるものと推察されます

www.city.akita.lg.jp

  • 下りの際の「女人堂」から「金山滝分岐」近辺

今回の登山で印象深かったことの内の一つとして、標題のエリア(正午すぎあたり)の暖かな風が挙げられます。林の中に降りそそぐ暖かな日差しのもと、久々に心地よい風に出会いました

5-2 今回出会った花~【咲き始めのシラネアオイ】~

画像R(09:34)下りにて「弟子還」→「宝蔵岳」区間にて

太平山のシラネアオイ

(以上)

*1:もうひとつの選択肢は金山滝(かなやまだき)コースです。こちらの方が距離がより長く、標高差も大きくなりますが、より本格的な縦走登山になります

*2:秋田県上小阿仁村にある「萩形・はぎなり」ダム方面から登る萩形ルートが代表的なルートとなります

*3:4の「二手ノ又登山口から女人堂まで」に3の「女人堂から太平山まで」を組み合わせた感じになります

*4:このルートでは以降、水場らしい地点は区間②の沢筋の徒渉点になろうかと思われますが、いずれも水量が乏しく当該地点での給水に過剰な期待を抱かない方がよいように思います

*5:中岳を「0/7」野田分岐を「7/7」に見立てた「道標」で「1/7」から「6/7」まで計6個設置されていました

*6:山頂に向かっている場合です。下山の場合は向かって右側になります

*7:林道入口の場所が分からない、あるいはそもそも林道の運転は苦手だ、等々の場合はクアドーム・ザブーンの北側駐車場の道路はさんで向かい側にも登山口がありますので、そこから入山することもできます。いずれ二手ノ又登山口に合流します。この方法を選択した場合は二手ノ又登山口から登った場合に比べ、約2キロメートルほど距離が追加となりますが、この延長ルートは林の中の道でほぼ平坦です

*8:登りと下りで数値が異なりますが、実測値のデータとしてそのまま掲載します

*9:車を運転中でした

*10:内2か所が画像Hに見られるような沢筋の徒渉、他の1か所が雪渓(画像J)でした

*11:蠅のたかり度合いとしては、特に午前11時30分頃の「中岳山頂」が「極み」でした

*12:例えば正午になってもなお「野田分岐」に至らず「弟子還」を午後遅い時間に登攀しなければならなくなった等といった状況は是非とも避けたいところです